表紙はリューニエくんとウォーロイさんです。ウォーロイさんカッコいいなぁ。
あらすじ
公式より
魔王軍が北の帝国でエレオラによる帝位簒奪を後押ししている最中、現皇帝が崩御。
順当にいけば帝位継承権1位である皇帝の息子が後を継ぐはずだが、同時期に継承権2位のドニエスク公が暗殺される。
ドニエスク家側は、アシュレイが帝位を奪われることを恐れて暗殺したと睨んで挙兵し、ドニエスク側とアシュレイ側は戦争に発展するが……。この戦い、一体どちらに“義”があるのか――!?
ヴァイトたちの行動から目が離せない第6巻!
みどころ
5巻の最後にロルムンド帝国の皇帝が崩御しました。その結果、この6巻から帝国の後継者争いが本格化していきます。
政敵となるのは皇帝の長男たるアシュレイ皇子とドニエスク大公家の皆様方。政敵といっても単純な悪役ではなく、皆さんそれぞれ高潔な志を抱いて皇位を望みます。
またまた、4巻から続くアイリア様とヴァイトくんの文通が読者にも状況がわかるようにまとめられていて、いい感じです。
ドニエスク公の一族の悲壮な決意
5巻で主に敵となるのはドニエスク大公家の皆様方です。謀略に長けた一族という評判はあるものの、皆さん私利私欲のために権力を欲する方はいらっしゃいません。各自がいかにロルムンド帝国の衰退を食い止めるかに腐心しています。それはもう悲壮的なくらいに。また、家族の愛情も並々ならぬものがあり、特にドニエスク公とイヴァン皇子のやりとりなどは涙無くしては読めません。と、いうか実際に読みながら泣いた。電車の中なのに。
そして、ドニエスク公の第二皇子ウォーロイさんがナイスガイです。本当に圧倒的にナイスガイ。そしてウォーロイさんとヴァイトくんのやりとりも素敵です。
俺が退出しようとしたとき 、ウォ ーロイ皇子が俺の背中に声をかけてきた 。
「俺はバカだから 、貴殿が何を企んでいるのかはわからん 。だが貴殿とはどこかで利害が一致する日がくると 、俺は信じているのだ 。貴殿もそうだといいな 」
俺は振り返ると 、実直な皇子に一礼する 。
「私も気持ちは同じにございます 、殿下 」
ただそれが難しいんだよな … … 。
二人とも立場の違いはあれども、互いに憎からず思っています。しかし、立場の違いが壮絶な戦いに。そして、6巻までの先品の中では勇者との戦いを除けばまさにベストバウト。
戦いの結果は是非、6巻をじかに読んで確かめてください。
戦におけるヴァイトくんの悪辣さ
6巻では大規模な戦闘描写がありますが、あまり大規模な乱戦描写というよりは俯瞰的に戦場を眺めるような描写で綴られています。ヴァイトくんが常々、自分に大軍は率れないといっていましたが、なんとなく作者の漂月さんがそういう大軍の合戦ものを描くより、少人数の血湧き肉躍る冒険譚みたいな描写が得意だからという邪推も…
まあ、三国志演義とか世の中の古典の戦記物も(少なくとも翻訳されたものでは)なかなかに戦場の描写は難しいのか、謀略やら心理描写の他は一騎打ちの描写が多かったりするので、集団戦と活字媒体の相性の悪さみたいなものはあるかもしれません。
そんなわけで、人狼部隊を率て搦め手や情報戦で優位に立つヴァイトくんをとくとご堪能ください。
読み切り「吹雪の大公」
6巻の読み切りは外伝っぽい外伝。若き日のドニエスク公と剣聖バルナーク卿の物語です。基本的にはこのお二人の馴れ初め(?)みたいなお話ですが、物語の謎のキーマンとなる剣奴ドラウライトの伝説が出てきます。なかなかにおじさまがたの若き日の冒険譚とかが面白く読めるお年頃になっていることに気がつきました。
それにしても話はそれますが、個人的にはロルムンド帝国に綿があったことが驚きです。この世界線では寒冷地でも問題なく育つ綿があるのでしょう。
Munackyはロルムンド帝国の皆様を応援しています。