表紙は主人公であるレッドとリットです。なろうで連載されている作品にしては珍しく角川スニーカーでの書籍化です。
あらすじ
公式より
「君は真の仲間ではない――」最前線での戦いについていけなくなってしまった英雄・レッドは、仲間の賢者に戦力外を言い渡され勇者のパーティーから追い出されてしまう。「はぁ、あんときは辛かったなぁ」レッドが抜けた事で賢者達が大パニックになってるとは露知らず、当の本人は辺境の地で薬草屋を開業しようとワクワクした気分で過ごしていたのだが……「私もこのお店で働いていいかな? 住み込みで!」突如かつての仲間であるお姫様が自宅まで訪ねてきて!? 追い出された英雄は第2の人生で報われる――。お姫様との幸せいっぱいな辺境スローライフ開幕!!
レッドとリットの出会い、そして二人の新たなスローライフを描いた大ボリューム45000字の【書き下ろしエピソード】を新規収録!「小説家になろう」四半期累計総合1位の超ヒット本命作が、大幅加筆にて遂に文庫化!!
みどころ
あとがきより
私は昔から R P Gが好きで色々とプレイしてきました 。本作は 、そんな R P Gに出てくる 「途中で離脱する仲間 」を主人公にした作品です 。
ロールプレイングゲームで途中離脱した仲間のその後を描く意欲作です。
個人的にはロールプレイングゲームで途中離脱する仲間というとファイナルファンタジー2のミンウやレイラが思い出に刻まれています。当時プレイしていた勇者の側からすると、頑張って育成したキャラクターがお話の都合でいきなりいなくなってしまうことにはとても残念な思いをしました。まあ、ミンウに関していうと、途中離脱しつつ、その後再合流して(大して強くない)究極魔法と引き換えに命を失うのですが、このお話では途中離脱した勇者の兄と他国の姫がその後の人生でスローライフを満喫するお話です。
パーティを追い出されたり、祖国を飛び出して辺境に流れ着いたレッドとリットの二人ですが、お話が始まるころには心の整理が一区切りついたのか暗い影もなくすごく前向きに暮らしています。二人の暮らしを読んでいて、読者がニヨニヨして元気になるくらい前向きです。
過去のエピソードなども織り交ぜられ、スローラーフを送りながらも、ちょっとした事件に巻き込まれながらこれを解決していきます。
最近はなろうでもスローライフ系作品が多くなっていますが、この「真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました」は情景や描写が丁寧で本当にオススメです。
加護と衝動について
この世界の人々の行動の根幹を司っている「加護」とその加護を得られる代償としての「衝動」が重要なキーワードになります。
主人公の妹のルーティが特に重点的に描写されています。ルーティは「勇者」の加護を持って生まれてきたのですが、その代償として勇者らしからぬ行動が全て精神的に抑制されてしまいます。例えば、絶望的な状況に陥って驚かず、あくまでも冷静に対処するなど、本人が従来持っている人間性みたいなものが失われているような感じです。
作中ではだいたい思春期のあたりに加護に気がつき(作中では加護に触れるという表現ですが)その衝動と向かい合っていくようです。世間一般の人もこの加護と衝動と折り合いをつけて生活していく様があちこちに描かれています。
スローライフの描写
スローライフものだけあって、スローライフの描写は見事としか言いようがありません。食事やお風呂(主にサウナ、そんなにキワドイ描写やガチムチな描写もありません)の描写が本当に楽しそうで、読んでいるこちらが幸せになってしまいます。
料理を作る描写はあまりないのですが、食べるときの料理の描写が美味しそうなのと、食べているシーンでのリットとレッドの会話などがとても素敵です。こんな人生を送ってみたい。
加筆部分と丁寧なキャラクター描写
レッドとリットの過去のエピソードが大幅に加筆されています。とってつけたようなものではなく、それが物語を描写する上で深みを与えることに成功しています。
全般的にキャラクターの内面の描写がとても丁寧でライトノベル(というか、文字媒体)の強みが存分に発揮されています。
基本的にレッドもリットもいい奴なので、読んでいて気持ちいいです。こういう人たちとお友達になれたら幸せだろうなぁ。
Munacky はざっぽん先生を応援しています